老犬レイクさんが教えてくれたこと
- ”Dog’s” 看板犬 茶々と寧々
- 6月14日
- 読了時間: 3分

この施設では、認知症や寝たきりの老犬さんをお預かりすると、一時的にでも元気を取り戻すことがほとんど。それが、この施設の誇りのひとつでした。長い間、お家の中だけで過ごしていたワンちゃんが、車いすに乗ってドッグランへ出たり、自然の空気を感じたり、昼間は好きなだけ歩き回れたりする。ほかの犬たちとの関わりも、良い刺激になります。
もちろん、老いを完全に止めることはできません。時間とともに、少しずつ体力も衰えていきます。それでも「ここに来て、少しでも元気になってくれて嬉しい」と、そう思える瞬間が励みになっていました。
けれど、群馬県からお預かりしたレイクさん(15歳)は、私にとって少し特別な存在となりました。ご自宅では1ヶ月近く寝たきりだったというレイクさんを、初めて車いすに乗せて身体を起こしたとき、自ら足を動かそうとし、支えなくても1メートルほど歩く姿が見られたのです。その光景に、私は希望を感じました。
ところが、数日後に下痢をしてしまいます。老犬の下痢はとても危険です。原因は、環境の変化によるストレスか、連日の暑さか、それとも久しぶりに外に出た身体への負担か。あるいは、ご飯の量が多かったのかもしれません。
すぐに食事を見直し、柔らかく消化の良いものを少しずつ与えることに。幸いにも、下痢は1日で治まりました。病院へ行くほどではなかったので、様子を見ながら慎重に過ごしました。その頃のレイクさんは、よく鳴いていました。20分ほど静かでも、またすぐに鳴き出す。そのたびに、車いすを押したり、お水を飲ませたり、寝返りを打たせたり…(夜中以外は)できるだけ応えていました。
けれど、徐々に元気がなくなっていきました。ご飯を食べなくなり、鳴かなくなり、身体も動かさなくなったのです。病院で診てもらうと、体重が急激に減り、脱水症状も起こしているとのことでした。どこかで、ケアに見落としがあったのかもしれない――そう感じて、振り返りました。
反省と学び
① 水分の与え方 器を口元に持っていくと、ぺちゃぺちゃと勢いよく飲んでいるように見えました。ですが、実際には器の水が減っていない。「あれ?」と思っていたのですが、後で飼い主さまから「1時間ごとに飲ませていた」と聞き、納得しました。レイクさんには、継続的な少量の水分補給が必要だったのです。
② 食事の量と姿勢下痢が心配で、食事の量を増やすのに慎重になりすぎてしまいました。「少しずつ…」と構えすぎたことで、必要な栄養が足りていなかったのかもしれません。
③ 外で過ごす時間の思い込み「外に出て自然に触れることが良い」と信じて疑わなかった私ですが、それがレイクさんにとっては、かえって身体の負担になっていた可能性もあります。
現在のレイクさんは、おかげさまで少しずつ回復し、ご飯も自ら口にしてくれるようになりました。鳴くことも、身体を動かすことも減りましたが、その分、ここで穏やかに過ごしてくれていると感じています。
レイクさん、本当にありがとう。あなたが教えてくれた学びは、これからのケアに必ず活かします。そして、残された時間を、ここで安心して過ごしてくれたら嬉しいです。
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