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静かに我慢してきた17歳の柴犬さん

 最初の依頼は「1週間のお預かり」でした。飼い主さんは95歳の高齢の男性で、お一人でお世話をしてきたそうです。時々、忙しい娘さんがお手伝いをしていたようですが、限界を感じ、施設に連れてきてくださいました。

 到着してまずはシャンプー。3回目のすすぎで、ようやく茶色い水が出なくなりました。おむつの跡はただれ、褥瘡からは膿が…。乾かしていくうちに、その傷が下腹部一帯に広がっていることがわかりました。「このワンちゃん、どれだけ我慢してきたんだろう…」そう思うと胸が締めつけられました。とても大人しい子で、夜中に鳴くとだけ聞いていましたが、それも痛みをこらえていたのかもしれません。

おじいさんは、きっとかがんでおむつを替えるだけで精一杯だったはずです。傷の存在には気づけなかったでしょう。無理もありません。ご自身の体だって、思うようには動かない年齢です。私の父も91歳ですが、とても犬の世話ができる状態ではありません。それを思うと、このおじいさんがほぼ一人でここまで頑張ってこられたことに、心から敬意を感じました。そして、ワンちゃんもそのことをわかっていたから、騒がなかったのかもしれません。

 病院では、腹部の毛を広範囲に剃り、傷口を丁寧に洗浄して薬を塗り、ガーゼで保護してくれました。尿管も汚れていたため洗浄し、傷口におしっこがかからないように、おむつではなくカテーテルを装着し、シリンジで尿を出すようにしてくれました。抗生剤の注射も打ち、ひとまず安心。

事情をお話しすると、飼い主さんはお預かりを1ヶ月に延長してくださいました。少しホッとしましたが、1ヶ月後におじいさんの元へ戻るのは、現実的に難しいのではないか…そんな思いが頭をよぎります。

 

 老犬ホームを始めて以来、私はずっと「飼い主さんを支える」ことを第一に考えてきました。どんな子も、どんな事情でも、飼い主さんが安心できるよう、そして愛するわが子を心置きなく預けられるように。最期の時まで、家族の思いを背負ってお世話をする――それが私の役目だと思ってきました。

けれど、今回の17歳の柴犬さんと出会って、心の奥から別の感情が溢れました。「この子を助けたい」その思いが、飼い主さんのサポートをしたいという思いよりも、強く、真っ直ぐに私の胸を突き動かしたのです。

静かに痛みをこらえてきた日々、声をあげず、ただじっと耐えてきた時間を思うと、胸が締めつけられます。私は、この子がもう二度と痛みに怯えることなく、穏やかで温かい時間の中で最期を迎えられるようにしたい――ただそれだけを純粋に願う気持ちがわきました。

この出会いは、私にとって老犬ホームを始めてから初めての、大きな心の揺らぎでした。

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